エルゴは赤ちゃんを抱っこやおんぶで移動するときに楽ということで人気ですが、赤ちゃんの股関節によいポジションを保てるということも人気の理由です。でも実際に股関節に先天性股関節脱臼などの問題を抱えた赤ちゃんへの使用はどうなのでしょうか。うちの末っ子がそうでした。
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先天性股関節脱臼の疑い
3人目の赤ちゃんが生まれてすぐ、まだわたしが分娩台で処置を受けているときに赤ちゃんをきれいにしていた助産師さんがオットに言っているのが聞こえました。
「太もものシワの数が違っているでしょう?」
まだお産の疲れでぼーっとしていたのですが心配になって、戻ってきたオットに聞くと、左右の太もものシワの数が違うので先天性股関節脱臼の疑いがあるとのことでした。
自分でおむつを替えるときに赤ちゃんの脚をよく見てみると、確かに太ももの向かって右側、赤ちゃんの左足のシワが1本多かったです。
赤ちゃんの足を正しいポジションに保つ
先天性股関節脱臼は、診断が確定した場合、今は赤ちゃんにリーメンビューゲルという装置を取り付けて治療するようです。発見は早いほど良くて、足を正しいポジションに保つのがとても大事とのこと。ほとんどのケースは正しい姿勢を保つことでなおるそうです。
オムツカバーの使用と向き癖対策
うちの赤ちゃんは普通に紙オムツを使っていますが、股関節脱臼の疑いということで足が開きやすいように上から布おむつのカバーをつけるようにしました。上の子に使って以来まったく出番がなかった布おむつカバーが役に立ちました。そして同じ方向を向いて寝る向き癖があったので、クッションなどを使って両側をおなじくらいの時間向かせて寝かせるように指導を受けました。
基本は赤ちゃんの足がM字のポジション
抱き方も足が伸びないでM字になるように足の間に手を入れてお尻を支えます。オムツ替えも足を持って持ち上げたりせず、お尻を持ち上げ、足は意識してM字に整えてあげます。エルゴは足をしっかり開くので使ってもよさそう、と判断しました。股関節脱臼の疑いのある赤ちゃんは足を伸ばした状態にするのがいけないので、横抱きとかで足を伸ばした姿勢にしないようにしないといけません。(スリングやベビービヨルンなどは気をつけてあげてくださいね)
エコーによる検査
新生児の頃に一度エコーで検査を受けたところ、やはり片側が股関節脱臼とまではいかないけれど正常でもなく、ごく軽度の形成不全。経過観察で再検査ということになりました。
生まれた時の足のシワの非対称って理由があるんですね。生後3ヶ月に入ってもういちどエコーで検査を受けたら骨もしっかりはまっていて、大丈夫とお墨付きをいただきました。嬉しかったです。
股関節脱臼の検査はレントゲンを使うところもあるようですが、エコーのほうが赤ちゃんへの負担が断然軽いです。放射線の心配がありませんし、赤ちゃんを不安な思いをさせることもない。
先天性股関節脱臼の検査を受けるなら、エコーで検査をしてもらえる病院を選んであげるとよいと思います。エコーでの検査なら新生児期から可能です。エコーでの股関節脱臼の検査は簡単なので、赤ちゃん全員に検診でスクリーニングしてもらえるといいんですけどね。
エルゴを使っても問題がないのか
股関節脱臼の赤ちゃんにエルゴを使ってもよいのか、というのが最初はとても心配だったのですが、生後1ヶ月のときの検査の前も、その後もうちの子にはエルゴベビーキャリアを使っていて、インファントインサートも普通に使っていました。健康な子にエルゴの姿勢は良いと信じて使っていましたが、股関節脱臼の疑い、と言われてもエルゴが大丈夫か不安だったんですけど正常な発達を妨げていないことがわかって一安心。
股関節はしっかりはまっているから大丈夫、と言っていただいたのでこれでもう何の迷いもなくエルゴを使うことが出来ます。
その後の経過
生後10ヶ月現在、つかまり立ちをはじめています。上の子たちと同じように出かけるときはよくエルゴを使っていましたが特に何も問題なく順調に成長しています。足もしっかりしていて力も強いので、もしかしたら上のふたりよりも早く歩きだすかもしれません。
うちの子の場合は、ごく軽度の形成不全でエルゴを使っても問題がありませんでした。先天性股関節脱臼の赤ちゃんの親御さんでエルゴの使用を迷っている方は、念のため抱っこ紐を専門の医師に見てもらって意見を聞いてからのほうがよいと思います。
日本小児医学会の意見
うちの子が生まれてすぐに探したときには見つからなかった、日本整形外科学会と日本小児整形外科学会が出している張り紙用の股関節脱臼についてのまとめを見つけました。日本小児整形医科学会のサイトからの資料です。-赤ちゃんが股関節脱臼にならないように注意しましょう-(www.jpoa.org/wp-content/uploads/2013/07/pediatric3.pdf)
赤ちゃんの股関節によい足の形、向き癖の対策、抱っこ紐(エルゴ)の使用についてなど、予防と対策についてまとめてあります。1枚にコンパクトにまとめてあるのでものすごく分かりやすいという感じでもありませんが、必要な情報がしっかり記載されているのでとても参考になると思います。
以下、抱っこ紐(エルゴ)での抱っこを考えるのに参考になる部分を抜粋します。リンク先を見ていただけばわかると思いますが、使用が問題ないといわれている参考図は対面抱き(ここでは正面抱きといわれています)エルゴタイプの抱っこ紐です。
抱っこは正面抱き「コアラ抱っこ」をしましょう
赤ちゃんは正面から抱くと、両膝と股関節が曲がったM字型開脚でお母さん(お父さん)の胸にしがみつく形になります。この正しい抱き方は、あたかもコアラが木につかまった形であることから「コアラ抱っこ」とも呼ばれています。(図4)同様に、両膝と股関節がM字型に曲がって使える「正面抱き用の抱っこひも」の使用も問題ありません。(図5)横抱きのスリングは開脚の姿勢がとれず、また、両脚が伸ばされる危険もあるため、注意が必要です。
引用元:-赤ちゃんが股関節脱臼にならないように注意しましょう-
www.jpoa.org/wp-content/uploads/2013/07/pediatric3.pdf
前向きだっこについては触れられていないのですが、すすめられているのは対面抱きです。股関節脱臼の予防には、足のポジションがM字型に曲がって赤ちゃんがしがみつく姿勢が正しい抱き方と書かれています。
某有名メーカーのベビーキャリアのように、赤ちゃんの足がまっすぐに伸びたようなポジションになる抱っこ紐は前向き抱っこの抱っこ紐に多い気がします。そちらはそちらで、どこかの医師が股関節によいなどとお墨付きを出したりもしていますが、このパンフレットを見る限り、足が自由に動いても動かなくても、足を下に伸ばすこと自体が赤ちゃんの股関節によくないということだと思います。
先天性股関節脱臼の疑いがあるといわれた赤ちゃんの親で、前向き抱っこにこだわる人がいるのかどうかわかりませんが、さんざん赤ちゃんの足によくないと言われているのに、なぜか前向き抱っこに強くあこがれる人が多いのがわたしには理解できません。刺激に晒されて興奮して、疲れて眠くなっても広がる世界の前にぶら下げられたままなんてかわいそう。自分のかわいい赤ちゃんを道行く人に正面から見せびらかして「カワイイ~」って褒めてもらいたいっていうのが本当の理由なのかなとひそかに思ってます。
自分の子供に先天性股関節脱臼の疑いもあったことから、抱っこ紐については論文が書けそうなくらい色々調べましたが、総合的に見て前向き抱っこ紐は撲滅されるべきものだとわたしは考えています。エルゴが360が発売されたのが本当に残念です。